今の時代の戦略人事?次世代の人事『戦略人事2.0』を考えてみた。

叫ばれて久しい戦略人事。

人事の役割について触れられたデイビッド・ウルリッチ氏の、「MBAの人材戦略」は1997年出版。
随分昔の本であり、その考え方は今の時代にどこまで即しているんでしょうか。

改めて今の時代の人事を考えてみました。

戦略人事とは何か

デイビッド・ウルリッチ氏らが提唱というのは有名で、
色んなサイトで書かれていますので詳細は割愛しますが、
簡単には、戦略人事の役割は以下の4つとのこと。

縦軸を未来と日常とし、横軸をハード/論理とソフト/感情と置いた上で、
各象限各々で命名されています。

1.戦略パートナー(Strategic Partner)

2.人材管理のエキスパート(Administrative Expert)

3.従業員のチャンピオン(Employee Champion)

4.チェンジ・エージェント(Change Agent)

※各種記事を元に筆者作成

また、その定義についていくつか引用してみると、

「戦略人事」とは、企業経営において、経営戦略と人材マネジメントを連携・連動させることで競争優位を目指そうとする考え方、およびそれを実現するための人事部門の機能や役割などを包括的に示す用語

出所:https://jinjibu.jp/keyword/detl/804/

戦略人事の概念はとてもシンプルで、経営戦略と人材マネジメントを連動させることで競争優位を目指しましょうという考え方

出所:http://diamond.jp/articles/-/65471?page=3

「戦略人事」とは、事業戦略を人事がその職務エリアで意味するものへと翻訳し、競合他社との差別化・優位性を人事面で構築する。

出所:https://rc.persol-group.co.jp/column-report/201607122118.html

「戦略人事」における人事は、経営戦略を深く理解し、経営者のパートナーとして人と組織の面から、事業計画を達成するために必要な打ち手を立案し、その実行に責任を持つ存在とされています。

出所:https://bizhint.jp/keyword/12266

各社様々な定義付けをしていますが、
経営に積極的に関わり、人事業務を遂行していく、という点が見てとれます。

戦略人事を取り巻く環境の変化

一方で、現代の人事を取り巻く環境を改めて考えてみると、
革新的なテクノロジーの出現や、人口動態変化、長引く好況による超売り手市場も相まって、
人と組織を取り巻く環境に、様々な潮流があることが分かります。

テクノロジーの潮流

・C向けで当たり前だった直感的で分かりやすいUI/UX、低コストで気軽に使えるといったSaaS型の登場
→HR techの勃興
・ビッグデータ(採用、育成、評価、活躍、リテンションまでの大量のデータが蓄積されてきている)
・人工知能(AI)、機械学習による分類、予測
・ブロックチェーン

方法論的な潮流

・ダイレクト・リクルーティング(ダイレクト・ソーシング)
・採用広報
・リファラル採用
・非階層化型組織

経済/人口動態、ライフスタイルの変化

・人口減少と企業業績の向上による超売り手市場
・働き方改革の潮流
-女性、ワーキングマザーの働き方
-副業/パラレルキャリア
-労働時間削減

戦略人事2.0を考えてみる

このような外部環境変化がある中で、今の時代における戦略人事とはどのようなものなのか?自分なりに考えてみました。

簡単に以下に図示しています。

縦軸に「攻めの人事」「守りの人事」としており、人事に取り組む姿勢の違いを表現しており、
横軸には「テック」「非テック」として、テクノロジーを軸に人事業務に切り込んでいくのかどうか、
という切り口でマッピングをしています。

※筆者作成

以下、順に説明していきます。

従来型人事

まず左下、「守りの人事」かつ「非テック」という組み合わせで、
従来型人事と表現しており、労務中心、経営層の指示ありきで動く人事となっています。

戦略人事1.0

従来型人事ではなく、もっと経営に関与していこうという提言を受け、
人事のあるべき姿が、これまで述べてきた戦略人事に軸足が移っていくわけですが、
これを「戦略人事1.0」と表現しています。

「攻めの人事」かつ「非テック」の領域が当てはまります。
昨今言われる「攻めの人事」を体現しつつ、経営と人事の連動を図り、
主体的能動的に解決を図っていく人事としています。

ただ、戦略人事1.0は、1997年当時に想定されているテクノロジーの範疇で思考されているため、そのテクノロジーは今とは大きくかけ離れているわけですね。

戦略人事2.0

今回考えてみた戦略人事2.0というのがこれで、
「攻めの人事」かつ「テック」を軸に人事を科学出来る人材を指しています。

外部環境の変化から考えるに、蓄積されたビッグデータや機械学習テクノロジーは、
経営の全ての領域に入り込んできており、人事も例に漏れず、
人事とテクノロジーは切っても切れない状態であることは言わずもがなです。

データサイエンス、AIは非常に大きな変化を起こす革新的なテクノロジーであるため、
それを考慮しない人事は、今後の人事足り得ないと自分は思っています。
(私自身が前職で深くAIに関わってきたことを踏まえ)

戦略人事2.0に求められるスキル

では、戦略人事2.0として求められるスキルとはどういうものであるのか?
自分なりに考えてみました。

経営や自社業務プロセスの理解

単に経営層が言うターゲット層や職種、人数ありきで、
採用に動くのではなく、そもそも本当にそのような人が今その事業に必要なのかどうか、
どんな人であればその事業を支援しうるのか、テクノロジーを関係させる前段階として、
経営的視点やビジネス理解はとても重要になるかと思います(データサイエンスの仮説立てに必要)。

人材市場を俯瞰する力と市場理解

人事を戦略的に行うべく、求める人材の中で、どのセグメントの求人の
受給ギャップが崩れているのかを導出出来るレベルでの、人材市場への理解を保有している必要があると思います。

ITの知見

「人事だからプログラミング知らなくて良い」は全然違うと思ってて、
プログラミング/システムは、人事であっても一定程度分かっている必要がある時代はすぐそこに来ていると思います。

他社サービスの導入や自社開発に至るまでの選択肢を自分で思考でき、
どのようなものをどう導入するとどう効果が上がるのか、
常に人事業務プロセスと他社ITサービスとを脳内で突合し、
意思決定する力を保有する必要があると考えます。

統計、機械学習の知見

(実装出来なくてもいいけど、少なくともAIで出来ること出来ないことを正確に理解する)
感覚で人を採用したり教育したり配置したりする時代ではなくなることが既に想定されています。
AIが出来ること/出来ないことを見極め、自社の人事プロセスを自動化、効率化したり、
(採用候補者や社員のコンピテンシー、それを踏まえた人材配置等の)判定精度を向上するための施策を立案する力が求められてくると思います。

デジタルマーケティングの知見

戦略人事2.0というよりも、そのもう1つ前段階として、
攻めの人事を標榜するには必須のスキルであると思います。

誰が今どういう市場にいて、どう思っていて、彼らのライフスタイルはどうで、
そこに自社のポジショニングを踏まえて、どうメッセージングするのか、
生活者理解とマーケティング方法論の両面の理解、
そしてそれをどう施策に落とし込んでいくのか?
総合的に立案し、実施するスキルが求められています。

知識を支える、フラットで合理的、柔軟な思考

当たり前ですが、知識だけでは意味がなく、
それらの知識、知見を踏まえ、合理的でフラットに意思決定出来る
明快な思考が必要がであることは言うまでもありません。

分かれる役割

とはいえ、これらを全て1人で獲得し、業務を行っていくことは、なかなか困難ですよね。。。

戦略人事に就任した暁には、上記の全てのスキル、知見を網羅すべきである、
というのは無茶振りでしかないので、
役割分担をして、「チーム戦略人事2.0」を構築すべきかなと思っています。

例えば、市場に全然存在しないとされ続けているデータサイエンティストは、
・ビジネス、経営の知見
・統計、AIの知見
・プログラミング力
の3つが満たされて初めてデータサイエンティストと呼ばれるとされていますが、
そんな人まあ市場には全然いないわけです。

で、データサイエンティストの業界で起こったことは、
1人で出来ないなら分業しようということで、チームデータサイエンティストが提唱され、
・ビジネスアナリスト(ビジネスと多少AIが分かる)
・AIエンジニア(AIとエンジニアリング)
みたいな棲み分けをしつつ、企業のデータ利活用を進めていっているわけです。

戦略人事2.0もそれに習うべきだと思っています。

戦略人事2.0の分業とその役割

では、具体的にその分業の仕方と役割はどうなるのでしょうか?
ここでもまた持論になりますが、自分なりのアイデアを書いてみようと思います。

戦略人事2.0の役割をマッピングしてみたものが以下の図になりますが、
横軸は、デイビッド・ウルリッチ氏らが提唱した軸を採用して「ハード/論理」と「ソフト/感情」とし、
縦軸では、「アウター」「インナー」と記載していますが、アウターとは社外の人材マーケットをターゲットに業務を行うことを主目的にしている役割、
インナーは社内の社員をターゲットに業務を行うことを主目的にしている役割として定義しています。

各象限に付している名前は、意味さえ伝わればなんでも良いと思いますが、とりあえずカタカナにしてみています。


※筆者作成

以下、順に説明していきます。

インナー・HRデベロップメント

まず左下、「ハード/論理」かつ「インナー」という組み合わせで、スキル開発やリーダー開発、人事評価/人材最適配置、労務リスク軽減といった役割を主体的に行っていく役割と定義しています。

スキル開発/リーダー開発:働き方改革やオフィス流動化に伴うクラウド教育がより活発になると思われますが、更にその先にはクラウド教育によって蓄積されたデータを用いて、AIによる個別最適化された社員教育をも想定しうる時代になってくるかと考えられます。

人事評価や最適配置:適切なタイプ/相性診断を適正検査および勤務実績データを元に判断される時代になると思われます。現在活発に議論されている領域だと思われますが、今後そういったアイデアや研究に目を止め、自社への適応を模索していくことは必要になるでしょう。

労務リスク:契約書の適正さ、メールの自動解析によるアラートなど、リスクをテクノロジーでどう解決していくかを提案する役割です。メールの自動解析による自動アラート機能などは、現在の技術で十分に取りかかることができる分野だと思います。

インナー・HRマネジメント

次に、右下、「ソフト/感情」かつ「インナー」という組み合わせで、社内の風土、環境改善、モチベーション改善などを通し、パフォーマンスを最大化する役割を担います。

モチベーション向上:組織風土や環境などがパフォーマンス/業績、社員のモチベーションにどう影響するかのデータ解析を踏まえた上で、影響度の高い改革を行います。現状ではモチベーションクラウドのようなアンケートデータを用いた単純集計/クロス集計型のツールを用いて明らかにすることが可能だと思われますが、今後はより高度化されたものが用いられていくことになるかと思います。

リテンション:退職しそうな人、モチベーションが下がっていそうな人を勤怠データや日報、Slackに投稿される自然言語、出社時の画像などを用いた機械学習により分類、予測を行うことで、退職を言われてから対応ではなく、言われる前に対応できる事柄に変更していく役割を担っています。こちらも非現実的ではなく既に行われていることであり、すぐにでも取りかかれることの1つしかもしれません。

ブランド・アンバサダー

最後に右上、「ソフト/感情」かつ「アウター」という組み合わせで、採用を意識したコーポレートブランドを、適切なターゲットに適切なタイミングで適切に届ける役割を担います。

採用広報:Wantedlyを中心に現在のスタートアップ市場は広報をいかに行うかが命題になってきているものの、単に外部向けに情報を発信するだけになってしまっているのが現状です。会社のマーケターと同程度にデジタルマーケティングに習熟することを念頭に、適切なターゲットに適切なメッセージをしていく必要があり、またそのPDCAはデータドリブンであることが求められる役割です。
各社が現在取り組んでいるMeetupや、ビズリーチ社が行っているような代表者セミナー等のリアルイベント及び、採用HPやランディングページ等のデジタル施策(次項記載のものも含む)も含めた、採用全体を統合的に考慮したマーケティングが求められています。

オウンドメディア、コンテンツマーケティング:デジタルマーケティング一般ではこれらは当たり前の潮流になっていますが、採用においてもこの流れがあると思われます。メルカリのメルカンなど既に行われており、また他社求人媒体に頼らず、自社でリスティングやディスプレイ広告等を打ち、自然流入を狙うためにコンテンツマーケティングに取り組み、自社に集客し候補者DBを構築していく、という流れはある意味で必然的かもしれません。

ストラテジック・リクルーター

最後に、左上、「ハード/論理」かつ「アウター」という組み合わせで、社員採用そのものや、選考プロセスの高度化を担当します。攻めの人事を体現する最も重要な役割になるかもしれません。

ダイレクト・リクルーティング:攻めの人事を体現する、非常に重要な役割だと考えています。自社にとって最適なターゲットおよびメッセージはどうなのか、という見極めを真にマーケティング観点により検討できるかどうかで成果は大きく変わる部分であり、ブランドやコーポレートのマーケター並にマーケティング知識を保有しており、適切な課題設定ができ、対策を打てる方が活躍をするフィールドであると思います。
また、今後の展開としては、人力でされているスカウトについても、近い将来に、スカウト題名や文面作成の自動化、送信そのものの自動化といった展開が想定され、テクノロジー動向を常にウォッチする必要がある役割でもあります。

リクルーティングオートメーション、候補者ナーチャリング:また、ブランド・アンバサダーが構築した候補者DBは、新規登録者として単に保存、蓄積されていくだけではなく、ナーチャリングしていく対象でもあります。
一昨年あたりから流行り始めたマーケティング・オートメーションは決して顧客向けだけに利用するのではなく、採用候補者に対しても当然に用いられる方法論/ツールであると思われ、リクルーティングオートメーションではないですが、候補者スコアリング、コンテンツの出し分け、個別メール送信等、対応の自動化がされていく領域であると思っています。今すぐに入社してくれなくても、例えば1年後2年後の入社をゴールに、候補者のナーチャリングに取り組んでいくことは非常に大きな役割になるのではないかと思われます。

選考プロセスの高度化:AIによる自動マッチングや自動判定(履歴書の経歴判定、画像判別など)、データ・ドリブンな入社後活躍の可能性が高い人材の見極め(業績や成果との因果関係項目の見極め、無関係な項目での選考排除)などが役割です。現時点で取り組めることはまだ少ないかもしれませんが、データの蓄積に伴い関係のある項目が早々に明らかにされてくると思われます。

プロ・リクルーターと戦略人事2.0の関係

本サービス名である『プロリク』はプロリクルーターの略語ですが、
では、プロリクルーターと戦略人事2.0との関係はどうなっているのか?という点についても触れておくと、
(既に図示していますが)「ストラテジック・リクルーター」、「ブランド・アンバサダー」を
兼ね備えるのがプロ・リクルーターだと思っています。
社外向けに主体的能動的に採用活動に取り組むプロフェッショナルとして定義出来るかと考えています。

戦略人事2.0は副業や在宅業務にとても向いている

戦略人事2.0は総合的に見て、非常にロジカルで、かつクリエイティブな業務の役割が多くなります。
社内にずっといる必要もなければ、手を動かしていれば良い仕事でもありません。
これまで以上に人事領域の事例のみならず、テクノロジー領域のインプットの質と量にこだわりつつ、
生産性が高い働き方が求められていると言ってもいいかもしれません。

そういった意味では、非常に副業や在宅勤務にも適していると思っています。

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橋崎良哉

二児の父。これまで4社経営の経験があり、複数社で新卒/中途採用に深く関わりダイレクト・リクルーティングを中心に採用活動を行う。学部後webベンチャー起業→家業の鉄鋼加工業→MBA→Webベンチャー→ナイジェリア現地企業に投資・共同経営→AIスタートアップ(6年でゼロから60名10億を牽引)→プロリク運営。

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